こんにちは。長年の頭皮のかゆみを解決するべくアレコレ試している化粧品開発者のかこです。
頭皮トラブルに対処するためには、まず頭皮について知るところから。ということで、顔の肌とどう違うのかをまとめてみました。
皮膚の構造は?
肌の表面に近いほうから表皮、真皮がありその下に皮下組織があるという基本の構造は頭皮でも顔の皮膚でも同じです。
「基底層」という場所で生まれた細胞がだんだんと肌の表面に押し上げられて、やがて垢となってはがれ落ちます。
その生まれてからはがれ落ちるまでのサイクルを「ターンオーバー」と呼びます。頭皮では4~6週間で、顔と同じ~遅いとされています。[1][2]
また、髪の毛が密集していることで頭皮の状態が目で見て確認しにくく、洗いにくいという特徴があります。
皮脂の量は?
皮脂は毛穴の中にある皮脂腺から分泌されます。
皮脂腺は顔よりも頭皮で多いことがわかっていますが[3]、必ずしも顔よりも頭皮の皮脂量が多いわけではありません。
部位 | 皮脂腺の数 |
---|---|
頭皮 | 144~192個/cm |
顔 | Tゾーン:52~79個/cm 頬:50~70個/cm |
頭皮の皮脂量についてはさまざまな国で複数の研究グループが調査を行っており、下記のようなデータがあります。
性別によって測定結果が異なり、男性のほうが女性より皮脂量が多い傾向にあります。
- 洗顔もしくはシャンプー後、洗う前の皮脂量に戻るまでの時間は顔で2時間、頭皮で24時間(女性のデータ)[4]
- おでこの皮脂量と前頭部の皮脂量は同じくらい、ほおの皮脂量と側頭部の皮脂量は同じくらい(女性のデータ)[5]
- 顔がオイリー肌の人は頭皮の皮脂も多く、顔が乾燥肌の人は頭皮の皮脂も少ない傾向がある(女性のデータ)[5]
- 側頭部の皮脂量はおでこの1.5倍(男性のデータ)[6]
- 男性の頭皮の皮脂量は女性の1.5倍[7]
水分量は?
頭皮は汗を出す汗腺も身体の他の部位より多いことがわかっています。[8]
その一方で、「頭皮のほうが顔より水分保持能力(角層水分量)が低い」というデータがあります。[9]
また、わたしたちの肌には内部の水分が蒸発しないようにする機能があり、これを「バリア機能」と呼びます。
バリア機能の指標として使われるのが水分蒸散量(transepidermal water loss:TEWL)で、「頭皮のほうがおでこより水分蒸散量が多い」つまり「頭皮は顔よりもバリア機能が低い」というデータがあります。[9]
ただしこのデータは洗浄後すぐの肌の状態を比べたものであり、実際は頭皮には髪が密集していて汗や皮脂が分泌されるため、乾燥から守るための要素も顔より多いのです。
痛みや温度などの感覚は?
皮膚にわずかな電流を流して、どの程度から知覚できるか?を図ることで、感覚の鋭さを数値化したところ、
温度、痛み、かゆみの感覚はおでこより頭皮のほうが鈍感というデータがあります。[6]
頭皮は水分保持能力やバリア機能が低く、トラブルを起こす要素が多いわりに感覚が鈍いので、トラブルが悪化しやすいと考えられます。
皮膚常在菌は?
私たちの肌には「皮膚常在菌」といわれる菌がいて、健康状態と密接に関連しているといわれています。常在菌にはプラスの働きをするものもあれば、マイナスの働きをするものもあります。
菌は大腸菌や乳酸菌などを含む「細菌」と、カビや酵母、キノコなどを含む「真菌」のグループに分けられます。
皮脂が豊富にあり、髪の毛に覆われていて湿度が高いことから頭皮はマラセチア菌という真菌が増えやすい環境です。
マラセチア菌は皮脂中の「トリグリセリド」という油を分解してオレイン酸などの物質をつくり、それが頭皮を刺激するといわれています。
また、2016年頃からは真菌だけでなく細菌も頭皮の状態に影響を及ぼすという研究データが発表されています。[10]
頭皮で高い比率を占める細菌は「アクネ菌」「表皮ブドウ球菌」「コリネバクテリウム」で、特に頭皮では「コリネバクテリウム」が多く存在しており、
頭皮に炎症がある人はこのコリネバクテリウムが増えすぎており、抜け毛や白髪につながることもわかっています。[11]
まとめ
ここまで、顔と比較しながら頭皮の特徴を見てきました。下にまとめます。
- 皮膚の基本的な構造は顔と同じ
- 皮脂腺は顔よりも多い。皮脂量については研究グループによって諸説あり
- 汗腺は多いが、水分保持能力、バリア機能は低い
- 温度、痛み、かゆみの感覚が鈍い
- 真菌のマラセチア菌、細菌のコリネバクテリウムが多い
今できる限りの情報を集めましたが、新しい情報を見つけたら随時更新するつもりです。
なかなか一般の方向けに情報がまとまっているサイトがなく、自分が知りたかったことを頑張って集めたので参考になれば嬉しいです。お読みいただきありがとうございました。
参考文献
- 花王株式会社 ヘアケア研究所 著、繊維応用技術研究会 編(2019)「改訂新版 ヘアケアってなに?」繊維社
- O’goshi, Ki., Iguchi, M. & Tagami(2000)「Functional analysis of the stratum corneum of scalp skin: studies in patients with alopecia areata and androgenetic alopecia.」 Archives of Dermatological Research, 292, 605-611 https://doi.org/10.1007/s004030000185
- 山村雄一,久木田淳ら(1982)「現代皮膚科学大系第3巻A」中山書店
- 中村 雅子(1994)「頭皮皮脂分泌量に関する研究 (第1報) 洗髪後の頭皮皮脂分泌量の回復について」日本化粧品技術者会誌, 27(4), 546-549
- 中村 雅子(1994)「頭皮皮脂分泌量に関する研究 (第2報) 頭皮皮脂分泌量と年代及び肌質との関連について」日本化粧品技術者会誌, 27(4), 550-553
- Yutaka Takagi, et al.(2015)「The Scalp Has a Lower Stratum Corneum Function with a Lower Sensory Input than Other Areas of the Skin Evaluated by the Electrical Current Perception Threshold」Cosmetics,2(4), 384-393 https://doi.org/10.3390/cosmetics2040384
- Pouradier, F., Liu, C., Wares, J., Yokoyama, E., Collaudin, C., Panhard, S., et al. (2017) 「The Worldwide Diversity of Scalp Seborrhoea, as Daily Experienced by Seven Human Ethnic Groups.」 International Journal of Cosmetic Science, 39, 629-636 https://doi.org/10.1111/ics.12425
- 上野賢一(1981)「小皮膚科書」金芳堂
- 川島眞(2007)「保湿のメカニズムと頭皮ケア」皮膚と美容,39(4),214-219
- Zhijue Xu, et al.(2016)「Dandruff is associated with the conjoined interactions between host and microorganisms」Scientific Reports, 6, 24877 https://doi.org/10.1038/srep24877
- 株式会社ミルボン ニュースリリース(2018)「頭皮の慢性的な炎症とスカルプフローラのバランスが関連することを発見~スカルプフローラのバランスを正常に近づける成分の同定にも成功~」
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