【化粧品開発者が徹底解説】95%が知らない頭皮常在菌の世界

髪と頭皮の基本情報

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こんにちは。長年の頭皮のかゆみを解決するべくアレコレ試している化粧品開発者のかこです。

以前の記事「【頭皮トラブルに対処するための基本】頭皮と顔の肌ってどう違うの?」で触れた「頭皮の常在菌」。

事前にアンケートを取ったところ、頭皮常在菌、スカルプフローラについてある程度説明できる人は5%以下、95%以上の人が詳しく知らないという結果でした。

そこで今回は

  • 頭皮常在菌、スカルプフローラってなに?
  • 頭皮常在菌研究の最前線
  • スカルプフローラを正常化する方法

を徹底解説します。

95%の人が知らない頭皮常在菌の世界、覗いてみませんか?

頭皮常在菌(スカルプフローラ)ってなに?

頭皮細菌叢(スカルプフローラ)

花畑(フローラ)のように、さまざまな菌が頭皮を覆っている

私たちの体には、常在菌(じょうざいきん)と呼ばれる菌が生息しています。

有名なのは腸内細菌ですが、皮膚や頭皮にも菌がいて、その数は全身で100兆個と言われています。[1]

気持ち悪いと思うかもしれませんが、

常在菌がいることで悪い菌が外から入って来づらくなるので、私たちの身体が守られることにもなるのです。

さまざまな種類の菌が身体の表面を覆っている様子を花畑(フローラ)に見立てて、

腸内細菌の生態系を「腸内フローラ」、

頭皮常在菌の生態系を「スカルプフローラ」と呼んでいます。

難しい話が嫌な人も、押さえてほしいポイント3つ

難しい話は苦手、ざっくりと理解できれば十分、という方のために絶対に押さえてほしいポイントを3つ挙げます。

  1. 頭皮にはさまざまな菌がいて、人によって菌の比率が異なる
  2. 頭皮の状態と菌の比率は相関がある
  3. 菌の比率が原因なのか結果なのか今のところ不明

頭皮常在菌の研究は2000年代に入って進んできた比較的新しい分野で、まさに今研究が進められている最中です。

頭皮が健康な人は菌Aの割合が多く、トラブルのある人では菌Bの割合が多いといったように、

頭皮の状態と菌の比率には相関があることがわかっています。

ただし、菌の割合が異なるからトラブルが起こるのか、トラブルが起こったことで菌の割合が変わるのかは今のところ不明です。

菌の種類や最新の研究内容はこの後解説しますが、具体的にどうすればいいかだけ知りたい方は

後半の「頭皮常在菌(スカルプフローラ)を正常化する方法」へジャンプしてください。

おもな菌の種類

ミルボンさんの調査で、頭皮には1000種類くらいの菌がいることがわかっています。

まず、その中でも特に比率の高い3つの細菌を紹介します。

なんとこの3種類だけで全体の90%を占めているんです。[1]

細菌

①表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)

皮脂に含まれるトリグリセリドを分解してグリセリンと脂肪酸をつくり、

皮膚のうるおいを与え、皮膚を弱酸性に保つはたらきをします。

脂肪酸は肌を弱酸性に保つのに必要ですが、中には頭皮を刺激するものもあります。

②アクネ菌(Propionibacterium acnes)

こちらも表皮ブドウ球菌と同様に皮脂を分解し、皮膚のうるおいと弱酸性を保ちます。

アクネ菌=ニキビというイメージが強いですが、

ニキビのない人の肌にもアクネ菌は存在し、普段は肌をすこやかに保つはたらきをします。

しかし毛穴が詰まって急激にアクネ菌が増えるとニキビの原因になるため、

「日和見(ひよりみ)菌」(状況によってよくも悪くもはたらく菌)とされます。

③コリネバクテリウム(Corynebacterium)

コリネバクテリウムは足の裏など、湿り気のある場所を好む菌です。

ミルボンさんの研究で、頭皮で特に比率が高いことが明らかになっており

増えすぎると頭皮の炎症の原因になり、白髪を誘発するというデータがあります。[1][2]

真菌

頭皮には上で紹介した細菌に加え、真菌も存在します。

細菌は乳酸菌や大腸菌の仲間、真菌はカビや酵母の仲間で種類が異なります。

頭皮の話をするうえで押さえておきたい真菌は、マラセチア。

マラセチアが皮脂を分解してつくるオレイン酸が頭皮トラブルの一因とされており、

脂漏性皮膚炎、フケ症に深く関連しています。[3][4]

頭皮常在菌(スカルプフローラ)研究の最前線

ここからは国内・海外の研究で明らかになってきたトピックを4つ紹介します。

ポイントは下の画像にまとめたので、保存したり拡散したりしてもらえると嬉しいです。

アクネ菌とブドウ球菌の力関係

日本人の頭皮において、健康な頭皮とフケ症の頭皮ではスタフィロコッカス科(表皮ブドウ球菌など)とプロピオニバクテリウム科(アクネ菌など)の比率が異なることがわかっています。

健康な頭皮ではプロピオニバクテリウム科(アクネ菌など)の比率が高く、

フケ症の頭皮ではスタフィロコッカス科(表皮ブドウ球菌など)の比率が高くなります。[5]

コリネバクテリウムの増えすぎはNG

健康的な頭皮は青白いですが、トラブルで炎症が起こると赤みを帯びます。

ミルボンさんの調査で、赤い頭皮では青白い頭皮に比べてコリネバクテリウム属の比率が高いことがわかっています。

さらにコリネバクテリウム属の細菌がつくる物質が毛根部の細胞に悪影響を与えるというデータもあります。[1][2]

ミルボンさんではコリネバクテリウムに働きかけて常在菌の比率を正常に戻す成分や製品の開発も行っています。

具体的な製品は後日まとめて紹介しますね。

いるだけで危険?「老化菌」エンテロコッカス

エンテロコッカス属の細菌はもともと腸や口の中に存在することが知られていました。

頭皮ではすでに紹介した表皮ブドウ球菌、アクネ菌、コリネバクテリウムほどメジャーではなく、

人によっては頭皮にエンテロコッカスが全くいないこともあります。

しかしエンテロコッカスがいる場合、過酸化水素をつくり頭皮ダメージの原因に

頭皮の菌全体のたった0.1%いるだけで、エイジングを加速させてしまうその強力な作用から

ミルボンさんはエンテロコッカスを「老化菌」と名付けて研究を進めています。[1][6]

菌にとってはなんとも不名誉なことですが…

マラセチアと脂漏性皮膚炎の深い関係

マラセチアが皮脂からつくるオレイン酸が刺激となり、脂漏性皮膚炎やフケ症に深く関与することが複数の研究グループにより指摘されています。

しかし、マラセチアの数とフケ症の重症度が必ずしも比例しないことから、

「マラセチアの数」「皮脂の量」「個人のオレイン酸への感受性」の3つのバランスによってフケが発生するという説が提唱されています。[4]

たとえば、「オレイン酸によってフケが増えない体質の人は、頭皮のマラセチアの数が多くてもフケ症にならない」といったことです。

マラセチアは約18種発見されており、中でもM.globosa(グロボーサ)とM.restricta(レストリクタ)がフケと強く関連するという報告があります。[7]

また、マラセチアの種類の比率も頭皮の健康状態に関係するという説があり、

レストリクタに対するグロボーサの比率が高いほど頭皮に脂漏性皮膚炎とフケが発生しやすいとする報告も。[8]

マラセチアに対しては抗真菌成分を含むヘアケアの有効性が示されており、複数のメーカーから商品が販売されています。

頭皮常在菌(スカルプフローラ)を正常化する3つの方法

ここまで頭皮常在菌について紹介してきましたが、

具体的にどうすれば常在菌のバランスが整うの?というのが気になりますよね。

ここからは常在菌のバランスを整える方法を3つの観点からご紹介します。

ヘアケア習慣

まずヘアケアの方法です。

①汗や皮脂はしっかり取り除く。一方で洗いすぎはNG

汗や皮脂は時間が経つと酸化したり、常在菌に分解されたりして頭皮トラブルの原因物質に変わります。

トラブルの原因を頭皮の上に乗せたままにならないように、きちんと洗い流すことが必要です。

一方で、過度なシャンプーは常在菌にもダメージを与えますのでシャンプー剤を使って洗髪するのは一日一回までにしましょう。

②髪が濡れたまま放置しない

髪が濡れたまま放置するとコリネバクテリウム属が増えやすくなるため、半乾きのまま寝てしまうのはNG。

きちんと乾かすことが大事です。

③急激なpH変動を避け、弱酸性に保つ

頭皮は通常、弱酸性に保たれていますが、

一部のヘアカラーやブリーチは髪と頭皮をアルカリ性にするので、常在菌にとっては急に環境が変わり、居心地が悪くなります。

常在菌自身が脂肪酸をつくるので何もしなくても時間が経てば弱酸性に戻りますが、

ヘアカラーやブリーチの後はpHをコントロールするヘアケア剤で早めに弱酸性に戻すことで、常在菌にとってよい環境が保てます。

ヘアケア製品

常在菌バランスを整える成分をヘアケアに取り入れるのも効果が期待できます。

今のところ、下記の成分の有効性が確認されています。

  • コリネバクテリウムの抑制→シソ科の植物エキス[2]
  • エンテロコッカスの抑制→フィチン酸、グリシン[6]
  • マラセチアの抑制→ピロクトンオラミン、硝酸ミコナゾール、ジンクピリチオン等の抗真菌成分[4]

具体的な商品は後日別の記事にまとめますのでお待ちください。

食生活

常在菌の栄養源は皮脂です。

常在菌の中でも、コリネバクテリウムは皮脂の量と比例して増えることがわかっています。

皮脂の量は食生活と関連しており、

脂っこい食事の取りすぎや急激な血糖値の上昇は皮脂を増やしてしまうため、注意しましょう。[1][9]

まとめ

ここまで頭皮常在菌、スカルプフローラについて徹底解説してきました。改めてポイントをまとめます。

  1. 頭皮上には常在菌が生息しており、スカルプフローラと呼ばれる生態系をつくっている
  2. スカルプフローラの主要な細菌は表皮ブドウ球菌、アクネ菌、コリネバクテリウム、真菌はマラセチア
  3. 頭皮の状態と菌の比率には相関がある
  4. 頭皮常在菌のバランスを正常化するにはヘアケア習慣、ヘアケア製品、食生活の見直しを

まだ研究途上の分野ですが、美しく健康な頭皮と髪を保つために常在菌が無視できない存在であることは明らかです。

これから研究が進んでいくのが楽しみですね。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献

  1. 伊藤廉(2023)「大人髪のトリセツ」KADOKAWA
  2. 株式会社ミルボン ニュースリリース(2018)「頭皮の慢性的な炎症とスカルプフローラのバランスが関連することを発見~スカルプフローラのバランスを正常に近づける成分の同定にも成功~」
  3. Byung In Ro et al.(2005) 「The Role of Sebaceous Gland Activity and Scalp Microfloral Metabolism in the Etiology of Seborrheic Dermatitis and Dandruff」Journal of Investigative Dermatology Symposium Proceedings, 10(3), 194-197
    https://doi.org/10.1111/j.1087-0024.2005.10104.x
  4. Yvonne M. DeAngelis et al.(2005)「Three Etiologic Facets of Dandruff and Seborrheic Dermatitis: Malassezia Fungi, Sebaceous Lipids, and Individual Sensitivity」Journal of Investigative Dermatology Symposium Proceedings, 10(3), 295-297
    https://doi.org/10.1111/j.1087-0024.2005.10119.x
  5. 花王株式会社 ヘアケアサイト「頭皮と菌」(2024年2月24日閲覧)
  6. 株式会社ミルボン ニュースリリース(2019)「頭⽪に存在する⽼化菌に⾼い効果を発揮する成分を発⾒〜髪や頭⽪の⽼化現象の抑制に成功〜」
  7. Meray, Y., et al. (2018). 「Putting it all together to understand the role of Malassezia spp. in dandruff etiology. 」Mycopathologia, 183(6) , 893-903.
    https://doi.org/10.1007/s11046-018-0283-4
  8. Tao, R., et al. (2021). 「Skin microbiome alterations in seborrheic dermatitis and dandruff: A systematic review. 」Experimental Dermatology. 30(10), 1546-1553.
    https://doi.org/10.1111/exd.14450
  9. 下川穣(2021)「菌ケアで美しくなる」幻冬舎

コメント

  1. りり より:

    すみません、アカウント消したんで、こちらからコメントさせてもらいます。
    漢方でしたらこの本の中身が気になるので…もし気になったらぜひ…。
    https://shop.ruralnet.or.jp/b_no=05_53721780/

    • りり より:

      おススメしてくれた本を買ってくれた上にレビューまでありがとうございます!
      自分も買ってみようと思います☺️
      実はまたもう一冊気になるのがあるのですが、これは最近発売したものなのでこれも気になったらぜひ…😋
      https://honto.jp/netstore/pd-book_33087091.html

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